2025年の転職市場はどうなるのか? コンサル業界の動向を探る

目次
世界情勢が不安定でも「今」がチャンス?コンサル業界の転職最前線【2025年版】
戦略コンサルタント、投資銀行・PEファンド、外資系エグゼクティブ、起業家など――
1,000人を超えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援してきた、渡辺秀和氏(株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO)が、キャリアアップを目指すビジネスパーソンの疑問・お悩みに答えます。
今回のテーマは、「世界情勢が混迷する中で、コンサルティング業界への転職は今も有望なのか?」というご質問です。
Q. コンサルティング業界への転職を考えているのですが、世界情勢の混迷による影響はありますか?
A. 2025年度前半も、コンサルティング業界は積極的な採用が続くと予想されます。転職を検討されている方にとっては、むしろ好機といえるでしょう。
現在、トランプ前大統領の再登板による米国の外交・通商政策の転換が、世界経済に影響を与え始めています。日本企業もその対応を迫られる中、転職市場の先行きに不安を感じるビジネスパーソンも少なくありません。
そこで今回は、依然として高い人気を誇るコンサルティング業界の転職動向について、最新の状況を整理してお伝えします。
■ DX・AI需要で2025年も成長を続けるコンサル業界
企業競争が激化するなか、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)や生成AI、ドローンなどの先端技術を活用した変革に取り組んでいます。
米調査会社ガートナーによると、2025年の生成AI関連投資は世界全体で6,440億ドル(約96兆円)に達し、前年より76.4%増加すると予測されています。こうしたトレンドを背景に、コンサルティングファームへのDX・AI関連プロジェクトの依頼は今後さらに加速する見通しです。
加えて、ESG投資や人権デューデリジェンス対応、地政学リスクに関する戦略アドバイザリーなど、新たな領域でもコンサル需要が高まっています。
■ グローバルファームの一部に陰り、明暗が分かれる展開に
業界全体としては拡大傾向にある一方、外資系コンサルファームの一部では成長鈍化の兆しも見られます。
ウクライナ情勢や米国経済の減速懸念を背景に、米欧でのプロジェクト数が減少し、米本社を中心に人員削減の動きが報じられているファームもあります。
ただし、すべてのグローバルファームが苦戦しているわけではありません。DX・AI領域を中心とした大型プロジェクトで高成長を維持しているファームも存在し、企業間での「明暗」がより鮮明になっています。
この差は東京オフィスの採用意欲にも表れており、ファーム選びの重要性が一段と高まっています。
■ 日系ファームの堅調成長を支える「2つの競争力」
一方、日系の戦略ファームや総合ファームは、堅実な成長を維持しています。その背景には、以下の2つの競争力が挙げられます。
1. 為替の追い風を受けた価格競争力
ドル高・円安の進行により、外資系ファームはプロジェクト単価が円建てで割高になる傾向があります。そのため、コストパフォーマンスに優れる日系ファームへの発注が増加しています。
2. 採用力・組織力の強化
日系ファームは、海外本社へのロイヤルティ支払いが不要なため、報酬水準を柔軟に設計できる利点があります。待遇向上により優秀な人材の採用と定着が実現し、組織の競争力が高まっています。
なかでも注目されるのが、**「日系グロースファーム」**と呼ばれる新興勢力です。外資系や大手総合ファーム出身のコンサルタントが立ち上げたこれらの企業は、上場を視野に入れた成長戦略を描きつつ、報酬水準もグローバルファームを上回るケースがあります。結果として、経験豊富な人材が続々と集まり、組織は急成長を遂げています。
■ 未経験者や40代のビジネスパーソンにも広がるチャンス
コンサルティングファーム各社は、事業拡大に向けて積極的な中途採用を継続しています。
加えて、コンサル経験者はPEファンドや事業会社の経営幹部候補としても需要が高いため、定期的な人材補充が不可欠という事情もあります。
また、コンサル業界では未経験者に対する門戸も広がっており、大企業の社員に加え、近年では国家公務員・地方公務員からの転職も増加中。コンコードを通じた公務員の転職者数は、過去5年で3倍以上に増加しています。
さらに、40代の未経験者にも転職のチャンスが広がっています。先端技術、M&A、事業投資、業務改革などの分野で実績を持つビジネスリーダー層に対し、ファーム側が積極的にアプローチしています。
年齢や業界経験を問わず、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境が整いつつあるのが、現在のコンサルティング業界の姿です。
■ 今後も好調が予想されるビジネス人材市場
今回はコンサル業界を中心に解説しましたが、現在の採用活況は他業界にも広がっています。たとえば、スタートアップ、総合商社、PEファンド、ベンチャーキャピタルなどでも、即戦力人材の積極採用が継続中です。
キャリアアップを検討しているビジネスリーダーにとって、2025年は転職市場が良好な状態を維持する一年となるでしょう。
渡辺秀和(わたなべ・ひでかず)
株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO。
一橋大学卒業後、三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て、2008年にコンコードを設立。
これまでに1,000人超のビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援し、「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門初代MVPを受賞。
東京大学で開講されたキャリア設計の授業「キャリア・マーケットデザイン」では、コースディレクターを務めるなど、若手層へのキャリア教育にも力を注ぐ。
主な著書に『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社)、『コンサル業界大研究』(産学社)など。
引用元記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/40dea971f1cf858ec2e5cb343aa82044bfbccd48