急速に変化するIT環境における「情報の信頼性」とリスク対応の重要性

近年、AIやクラウドをはじめとする情報技術(IT)の急速な進化により、企業のIT環境は劇的な変化を遂げています。経済活動そのものがITを前提として展開されるようになり、業務のデジタル化も加速度的に進行しています。こうした状況の中、企業は単なる業務効率化や規制対応にとどまらず、ITの活用を見据えた経営戦略の抜本的な見直しを迫られています。
情報の信頼性が果たす役割
このような変化において、企業にとって「情報の信頼性」の確保はこれまで以上に重要な経営課題となっています。情報の正確性・完全性・一貫性・可用性・機密性が損なわれると、意思決定や業務効率に深刻な支障をきたすばかりでなく、顧客や取引先との信頼関係を損ねるリスクも伴います。さらに、情報漏えいによって機密性が失われた場合、企業の競争力や法令遵守体制に多大な影響を及ぼす可能性も否定できません。
このようなリスクを回避し、企業の持続的成長と競争力を支えるためには、常に信頼性の高い情報を維持・提供できる体制の構築が不可欠です。
情報セキュリティとの違い
「情報の信頼性」は、情報セキュリティの3要素(機密性・完全性・可用性)と多くの共通点を持ちますが、目的には明確な違いがあります。
- 情報セキュリティは、「情報を脅威から守る」ことに主眼を置いています。
- 一方で情報の信頼性は、「正確で一貫した情報を維持し、業務や意思決定において活用できる状態を保つ」ことを目的とします。
たとえば、セキュリティの観点からは「機密情報の漏えい防止」が重視されますが、信頼性の観点では「正確な情報の維持によって、迅速で的確な意思決定を可能にする」ことが中心的なテーマとなります。
ITガバナンスの役割とリスク対応
情報の信頼性を高めるためには、ITガバナンスの枠組みを適切に活用し、ITに関連するリスク管理と統制を強化することが重要です。
- ITガバナンスは、企業戦略とIT戦略を統合し、リスク管理の指針を提供する基本的な枠組みです。
- ITリスク管理は、このガバナンスのもとで、情報システムに関わるリスクを特定・評価し、適切な対策を講じる役割を担います。
- IT統制は、情報システムが適切に運用されるように管理し、業務プロセスの透明性と信頼性を維持する仕組みです。
これらの取り組みを連携させることで、企業は潜在的なリスクを最小限に抑えながら、変化の激しいIT環境下においても、持続的に「信頼できる情報」を確保し続けることが可能となります。
本レポートでは、こうした背景を踏まえ、急速に変化するIT環境における主要なITリスクを分析し、企業が取るべき具体的な対応策について体系的に整理・考察していきます。
引用元記事:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/risk-management-and-it-control.html