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「エリート人材が吸い込まれる“金融・コンサルのバミューダ・トライアングル”」──歴史家ブレグマン氏が警鐘

歴史家ルトガー・ブレグマン氏は、自身の新著『Moral Ambition』で、エリート大学を出た優秀な人材が金融やコンサルティング業界に流れる現状を「才能の無駄づかい」と批判しています。説明会には本来、パンデミック対策や貧困撲滅といった社会課題に取り組むブースが並ぶべきなのに、現実にはゴールドマン・サックスやマッキンゼーといった高給・安定志向の企業しか並んでおらず、「才能のバミューダ・トライアングルだ」と嘆くブレグマン氏。彼は、同じ志を持つ人々で“道徳的な大志”を共有するコミュニティ──いわば自分たちの「カルト」を築くことで、より意義あるキャリア選択と社会変革を実現すべきだと提唱しています。「多くの人が世界をよくしたいと願いながら、なぜか高給業界に吸い込まれていく」と指摘し、本当に価値ある仕事への転換を促しています。

オランダの歴史家ルトガー・ブレグマン氏は、『Humankind 希望の歴史』(2020年)や『隷属なき道』(2017年)など累計200万部を売り上げた著作の中で、高給ゆえに社会への悪影響が大きい職業──たとえば大手タバコ企業や、一部の金融・コンサルティング業界──に人材が集中する構造を批判してきました。すべてが「有害」ではないものの、もし優秀な人々が社会課題の解決に取り組んでいれば、その機会費用は計り知れないと指摘します。

一方で、ブレグマン氏は「金銭目的だけで金融やコンサルを選ぶ者は全体の一部に過ぎない」とも言います。彼らが求めるのは「選択肢を残す安心感」であり、未来への漠然とした不安から、マッキンゼーなどの大手を“次の安全なステップ”と捉えて飛び込んでしまうのです。

「彼らは常に優等成績を維持し、“最高の小学校→最高の高校→エリート大学”というルートを歩んできた。真に自分の人生を選ぶ決断を先送りし、大人になる準備を避けたいからこそ、大企業の肩書きが魅力的に映る」とブレグマン氏は語ります。

こうした「優秀な迷える若者たち」を救うには、倫理的・社会的意義を掲げるキャリアパスを示し、同じ志を持つ仲間と支え合うコミュニティ──彼のいう“カルト”──を築くことが必要だとブレグマン氏は提案しています。

ブレグマン氏は、金融の仕事が持つ知的な魅力を認めつつも、最優秀層が「モラル・チャンピオンズリーグ」──いわば善行を競う舞台──を求めていると語ります。サッカーの欧州チャンピオンズリーグのように、優秀な人材が社会課題に挑む大舞台を用意しなければならないというのです。

たとえば、飢餓問題や気候危機といった人類共通の難題に、大規模な研究や革新的技術開発で挑む。あるいは、行動主義やロビー活動、大胆な社会起業を通じて変革を促す──。ブレグマン氏は「自分の情熱ではなく、自分の影響力が最も大きい領域を選ぶべきだ」と主張します。

「最適なキャリアは、課題の性質で決まる。最先端研究を必要とするものもあれば、社会運動や起業家精神が活きる場もある」とブレグマン氏は語っています。

引用元記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/befb0e22e99ffc1c4f9a7365fe11ca15b5084f99