デロイト トーマツ グループ、「ブルーエコノミー」を戦略アジェンダに据え、海洋産業の変革と脱炭素を推進

デロイト トーマツ グループは、海洋がもたらす経済価値と環境価値の両立を目指す「ブルーエコノミー」を戦略アジェンダに掲げ、コンサルティング機能、グローバルネットワーク、データ活用力を生かして、海洋関連産業の変革を支援している。造船・海運・港湾をまたぐ海洋物流の進化を促し、日本の国際競争力強化とカーボンニュートラルの実現に貢献していく構えだ。
目次
「ブルーエコノミー」:持続可能な成長の鍵に
世界の貿易量の9割を担う海運は、全CO2排出量の約2%を占める。経済成長に伴い海運需要は今後も増加が見込まれ、気候変動への対応が急務だ。
こうした背景のもと、デロイト トーマツ グループは、海洋資源の持続可能な活用による「経済価値」と、海洋生態系保全による「環境価値」の両立を図る「ブルーエコノミー」を、日本の成長戦略における中核的テーマと位置付けている。
海洋物流の脱炭素には、業界横断の連携が不可欠
デロイト トーマツ コンサルティングの高柳良和 執行役員(ブルーエコノミー共同リーダー)は、「脱炭素化は船を運用する企業だけでは実現できません。造船、港湾、荷主など、サプライチェーン全体での取り組みが必要です」と強調する。
同社の上杉利次 執行役員(船舶領域推進リーダー)は、「重油から水素・アンモニアなど次世代燃料への転換は、造船業界のビジネスモデルを根底から変える可能性があります。投資判断のタイミングを逃せば、将来的にも化石燃料船が多く残り、環境対応に遅れをとるリスクがあります」と語る。
また、財務アドバイザリーを担うデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーの片桐亮 パートナー(ブルーエコノミー共同リーダー)は、「業界に山積する課題の解決なくして、脱炭素投資の成功はありません」と述べ、インフラ・公共領域への支援の重要性を指摘する。
港湾整備と地域経済の活性化
老朽化が進む日本の港湾も、大規模な脱炭素対応が求められている。国内物流の「2024年問題」、レジャー需要の回復、そして生物多様性への配慮など、港湾には多様な機能と役割が期待されている。
港湾領域を担当するデロイト トーマツ コンサルティングの大島泰介 執行役員は、「今後登場するアンモニア燃料船などへの対応を見据え、日本の港湾にも柔軟かつ脱炭素型の整備が求められます。地域と連携した港湾整備を通じて、国際競争力を高めていくことが重要です」と語る。
データ活用が産業連携の要に
海洋分野におけるデータの重要性も増している。政府は「海しる」などの情報システムを通じて、地形・気象・水産・安全などの情報整備を進めており、複数省庁によるデータの統合も進展中だ。
グループでは、こうしたデータを活用し、異業種間の連携を強化。さらに、デロイトUSが2025年3月に打ち上げた人工衛星「Deloitte-1」の利活用も検討している。この衛星は、船舶の動態監視などに活用可能な電波収集機能を備えており、今後は各種センサー搭載によるリアルタイムな海洋データ収集も視野に入れている。
片桐氏は、「宇宙から広範囲を監視できる衛星は、海洋データの収集に極めて有効です。これを活用し、独自ソリューションの提供を進めていきます」と展望を語る。
グループの総合力で日本発の知見を世界へ
デロイト トーマツ グループでは、養殖・海藻・観光・海洋エネルギーなどの多様な分野において、「事業開発×サステナビリティ」をテーマにした変革支援パッケージを提供。また、2025年6月には、戦略機能を担う一般社団法人「デロイト トーマツ戦略研究所(DTSI)」を設立する。
共同理事長には、ブルーエコノミーに精通する笹川平和財団理事長・角南篤氏を迎えた。高柳氏は、「DTSIでは、デロイトのグローバルネットワークと最新のインテリジェンスを活用し、日本発の知見を国際ルール形成へとつなげていきます」とし、国際競争力のあるサプライチェーン構築に向けた意欲を示している。
引用元記事:https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM047TR004062025000000