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「ありがとう」をノルマ化せよ──40代から始める“強いマネジメント力”の磨き方

※本稿は、藤井孝一著『40代がうまくいく人の戦略書』(三笠書房)を再編集したものです。

「プレイヤー」から「マネージャー」へ──40代で求められる“働き方のシフト”

40代という時期は、過去の経験とスキルだけでもある程度仕事をこなせる年代です。多少のトラブルがあっても、経験則で乗り越えられる場面が増えるでしょう。しかし、そうした「慣れ」や「安心感」が、知らず知らずのうちに成長を止めてしまうリスクも孕んでいます。

キヤノン電子名誉会長・酒巻久氏はこう警鐘を鳴らしています。

「40代になっても20代や30代と変わらず最前線を走り続けている人は多い。しかし、どんなに努力しても、若い世代と勝負できなくなるときは必ず来る」

だからこそ40代は、「プレイヤーとして走り続ける」だけでなく、自分の強みを再定義し、マネジメント力を軸とした新たな価値を築く必要があります。

「任せる力」「信じる力」がマネジメントを支える

マネージャーに求められるのは、プレイヤーとしての成果だけではありません。部下の力を引き出し、組織として成果を最大化させる「任せる力」「信じる力」が不可欠です。

たとえば、部下に任せたはずの仕事を、「昔からの付き合いだから」と自ら対応してしまっていないでしょうか。それでは人は育ちません。むしろその担当者と部下を引き合わせ、関係構築を促すことで、部下の成長と組織の持続力につながります。

マネジメントとは、言い換えれば「人を通じて成果を生む仕事」です。だからこそ、いままでとは異なる能力が必要とされます。部下のやる気を引き出したり、突っ走る若手にブレーキをかけたり──こうした調整力こそ、40代に不可欠なスキルです。

不確実な時代、企業を超えて通用する力を

転職する気がない人も、いまや「会社が存続する保証」はどこにもありません。自分が今いる組織でしか通用しないスキルしか持っていなければ、いざというとき選択肢を持てないのです。

だからこそ、40代では「どこでも通用するマネジメント力」を意識的に磨いておくことが、キャリアの持続性を担保する鍵となります。

業績が悪いときほど「感謝」を伝えよ

経営者として10年以上会社を率いた筆者は、試行錯誤の中でひとつの結論に至りました。

「うまくいっていた時期は、いつも笑顔と感謝を心がけていた」

業績が悪化すると、つい心が荒れ、社員に厳しく接してしまいがちです。しかし、そんなときこそ「ありがとう」を意識的に伝えることで、社内の空気が変わり、結果的に業績も上向いていったといいます。

ただし、感謝の気持ちは気合だけでは続きません。筆者は「毎日10回“ありがとう”を言う」ことをノルマにしました。スマホの待ち受け画面に表示したり、自動メールで自分にリマインドしたりと、あらゆる方法で習慣化を図ったのです。

役職が上がるほど、「ありがとう」を口にする機会は減ります。だからこそ、見える化し、習慣化する必要があるのです。

「好奇心」が視野の広さを決める

視野の広い人と、狭い人──その分かれ道は「好奇心」にあると筆者は語ります。

学生時代、あえてホテルのボーイや左官業、植木屋など、社会に出れば縁のなさそうなアルバイトを経験したといいます。そこには一流大学出の作家崩れや、芽の出ない役者、歌舞伎の女形崩れなど、普段交わることのない人たちとの出会いがありました。

異なるバックグラウンドの人たちと接することで、自分の価値観や視野が広がる。それは40代以降のキャリア形成においても重要な“資産”となるのです。

「弱い繋がり」がもたらす、新しい情報

スタンフォード大学の社会学者、マーク・グラノヴェッター教授は「弱い紐帯の強さ(The Strength of Weak Ties)」という理論でこう述べています。

「親しい間柄よりも、弱いつながりの人から新しい情報がもたらされる」

同じ業界の人とだけ付き合っていると、得られる情報も似通ってきます。他業種や異なる価値観を持つ人と積極的に交流することで、自分にない視点や新たな気づきを得られるのです。

他業種との接点が、未来の自分を救う

では、具体的にどう人的ネットワークを広げればよいのでしょうか?

たとえば休日に、あえてホテルやコンビニなど異業種でのアルバイトを経験することで、接客の現場や世代ごとの行動様式に触れられます。そこまでの時間や体力がなければ、地域のボランティア活動やカルチャー講座に参加するのも良い方法です。

そこには、主婦、学生、高齢者、商店主など多様な人たちがいます。介護制度や就活、PTA問題など、現場の生の声を聞ける貴重な場でもあります。

「同業種の壁」を壊す勇気を

40代以降のキャリアは、“つながりの質”によって差がついていきます。

これからの時代は、職種や肩書ではなく「その人自身」とどう向き合うかが重要です。自分の中に無意識に築いている“同業種の壁”を取り払い、多様な価値観に触れることで、新たな視点と可能性が開けていくはずです。

引用元記事:https://president.jp/articles/-/97004