「地方銀行の枠を超える」中国銀行が挑む、事業承継支援と脱炭素戦略

~ちゅうぎんフィナンシャルグループ 加藤社長インタビュー~
岡山県を地盤とする中国銀行とその持株会社である株式会社ちゅうぎんフィナンシャルグループは、地方創生に向けた独自の取り組みを加速させている。代表取締役社長の加藤貞則氏は、「金融機能の提供にとどまらず、地域企業の継続的成長を支える総合サービス業への進化が不可欠」と語る。
目次
6割の企業が後継者未定、危機感が生んだ事業承継支援体制の強化
岡山県内では、半数以上の企業が後継者未定という課題を抱えている。黒字であっても廃業を余儀なくされるケースも多く、企業数の減少は地域経済だけでなく、金融機関の融資先縮小にもつながる。
「お客様である企業が減っていくことへの危機感から、当行では事業承継支援を重要なテーマとして取り組んできました」(加藤氏)
同行では、2019年度に41件だった事業承継コンサルティング(M&Aを除く)件数が、2023年度には93件に倍増。2024年度は上期だけで60件を超え、通期では100件超を見込む。
本部の専門チームだけでなく、営業店の行員も相談対応を担う体制を構築。現場で日常的に接しているからこそ、顧客の本音に寄り添えるという。
「事業承継は身内にも相談しにくい話題。信頼関係を築いてきた銀行だからこそ、顧客にとっては安心して相談できる存在であるべきです」(加藤氏)
スタートアップ支援と両輪で「企業の持続可能性」に向き合う
同グループは、地域の新陳代謝を促すスタートアップ支援にも注力。起業スクールやビジネスコンテストの開催、資金支援などを通じて新たな企業の創出を支援する。
「ただし、起業支援だけでは不十分です。既存企業をいかに支えるかが、地域経済にとって本質的に重要です」(加藤氏)
事業承継と創業支援の両面から、地域経済のサステナビリティを高めていく構えだ。
炭素会計アドバイザーを1,000人規模で育成へ 環境課題にも本格対応
さらに同行は、脱炭素社会の実現に向けた先進的な取り組みでも注目されている。2024年度には「21世紀金融行動原則 最優良取組事例」として環境大臣賞を受賞。
中核施策として「炭素会計アドバイザー」の資格取得を推進し、2026年までに1,000人規模の体制構築を目指す。特に製造業が集積する岡山県において、CO2排出削減は喫緊の課題だ。
「サプライチェーン全体で脱炭素への対応が求められるなか、大企業に属さない中堅・中小企業が取り残されないよう、我々が支援する使命があります」(加藤氏)
「金融機関」から「地域の総合サービス業」へ
「人材不足」「後継者問題」「環境対応」など、地域企業が直面する課題は複雑化している。こうした課題に伴走する存在として、同グループは「地域の総合サービス業」へと進化することを明確に掲げる。
「地方銀行は“金融”という枠にとらわれず、より広い価値提供をしていくべき存在です。事業承継やカーボンニュートラルへの対応を支援することで、地域の企業と共に未来を築いていきたいと考えています」(加藤氏)
引用元記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/f3e9d047701d7971fc1e5133a4ce43706f5e0090