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アクセンチュア、極秘AIをデモ公開 “秒”で資料作成、コンサル業務の4割がAIに?

アクセンチュアの執行役員 兼 AIセンター長を務める保科学世氏が、同社が開発中の最新AIツールを初公開した。従来のコンサルティング業務を一変させるその革新性とは何か。AIが加速させる「新時代のコンサルティング」の姿が明らかになった。

プレゼン資料を“秒”で生成 社内開発のAIツールが業務を刷新

今回デモンストレーションされたのは、アクセンチュアが社内向けに開発しているAIツール。PowerPointと連携し、「成果型コンサルティングのビジネスモデルについて説明するスライドを作成して」といった指示を出すだけで、わずか数秒で資料が自動生成されるという。

保科氏は、「従来であれば複数人のチームが1カ月かけて作成していたものが、今や1週間以内に完成する」と説明。資料作成のプロセス全体を、AIが企業データの読み込みからストーリー構成、スライド作成まで一貫して担うことが可能だという。

「人間の介入なし」で40ページの提案書も作成可能に

このツールは、単なるレイアウト補助にとどまらず、AIが自らストーリーを構築し、最大40ページの提案書を自動作成できる点も注目される。あくまで社内用として活用が進められているが、その完成度は極めて高い。

「コンサル業務を構造化し、AIが最適な形に仕上げてくれる」と保科氏は語る。資料作成にかかる時間が劇的に短縮されることで、コンサルタントはより高度な課題解決や戦略立案にリソースを集中できるようになる。

業務の3~4割がAIで代替可能に? 変わる人間の役割

保科氏は、こうしたAIツールの普及によって「今後、コンサル業務の3〜4割がAIに置き換わる可能性がある」と見通しを示す。ただし、AIに全てを任せるのではなく、「リスクを取るのはあくまで人間」と、意思決定の最終責任は人間に残ると強調する。

このような“極秘AI”の導入は、単なる業務効率化ではなく、コンサルティング業界のビジネスモデルそのものを変えようとしている。アクセンチュアの取り組みは、コンサルティングの未来を示唆する試金石となるだろう。

意思決定にもAIを 「バーチャルCXO」が企業経営を変える

アクセンチュアでは、AIの活用を単なる業務効率化にとどめず、経営判断そのものに踏み込む取り組みを加速している。保科学世氏が語ったのは、**「バーチャルCXO」**と呼ばれる次世代型AIエージェントの開発だ。

「CEOを支えるAIや、AIエージェント同士が対話しながら提案書を作成していく、そんな世界を目指しています」と保科氏は話す。

この構想では、営業・生産・マーケティングなど各部門に専用のAIエージェントを設置し、彼らが相互にコミュニケーションを取りながら業務調整を行う。これにより、部門横断的な意思決定のスピードと質を大幅に向上させることが期待されている

「AIにリスクは取らせない」 人間に残される役割とは

AIが業務を代替する割合が増えていく中でも、「人間の役割が消えるわけではない」と保科氏は明言する。実際、アクセンチュアの試算では、コンサルタント業務の3~4割がAIによって置き換わる可能性があるという。

とはいえ、AIはあくまで選択肢を提示し、シミュレーションを行う存在にすぎない。最終的な意思決定やリスクテイクは人間が担うべきだというのが、同社の基本スタンスだ。

AIの普及により、社内教育や人材育成の方法にも変化が求められている。保科氏は、AIをトレーナーとして活用する新しい学習スタイルに注目している。

「AIトレーナーの方が、実は成長が早い。なぜなら、人間の上司には聞きづらい“バカな質問”も気軽にできるからです」と語る。

このように、AIは教育の壁を取り払い、社員のスキル向上を加速させる存在にもなり得る。アクセンチュアは、単なるAI導入企業ではなく、AIを活用した「人間の進化」までを視野に入れた変革企業としての地位を築こうとしている。

アクセンチュア自身も「変革の実験場」に

保科学世氏は講演の最後に、アクセンチュア自身がAIを活用した変革を遂げていることについて言及した。従来のコンサルティングの枠を超え、テクノロジー開発や業務受託といった領域にも積極的に進出しているという。

「必要なことを、何でもやっていく」。この言葉に象徴されるのは、クライアントの課題解決に対して、サービスの線引きを設けない“変革パートナー”としての新しい在り方だ。

アクセンチュアの事例は、AIがもたらすイノベーションが、コンサルティング業界にとどまらず、企業経営のあらゆる領域に波及していることを示唆している。

今後は、より多くの企業がAIの活用に本格的に取り組み、業務効率化と同時に、創造性や戦略性を高める経営へと進化していくことが予想される。

引用元記事:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/1864739